9 肩関節脱臼(かたかんせつだっきゅう)
肩関節は、肩甲骨の浅いソケットに、上腕骨がぶら下がっている頼りなげなもので、
関節部には、骨の連結がなく、大きな可動域を有しているのですが、そのことで脱臼しやすい
構造となっています。
バイクや自転車を運転中の衝突等で、転倒した際に体を支えようとした腕が、
横後ろや上方に無理に動かされたときに、上腕骨頭が不安定となり、関節面を滑って
脱臼となります。 また、転倒した際に、肩の外側を強く打ったとき、腕を横後ろに持って
いかれたときなどにも生じます。脱臼の多く、90%以上は、上腕骨頭が身体の前面に移動する
前方脱臼です。
前方脱臼以外にも、転倒した際に、体の前方に腕を突っ張ったとき、肩の前方を強く打撲したときに生じる後方脱臼、上腕を横方向から上に無理に動かされたときに生じる下方脱臼があります。
治療では、観血手術(メスで患部を開くような手術)の選択は少なく、上記の写真のように、外旋位固定が3週間続けられることが一般的です。
肩関節脱臼における後遺障害のポイント
1) この傷病名を確認すると、肩関節の機能障害で12級6号を連想します。
もちろん、計測結果だけで認定されるものではないことは、これまでに述べた通りであり、MRIやXPでの立証が必要です。
また、症状固定の時期についても、実際上は重要な検討ポイントになります。
2)合併症に注意
肩関節脱臼となると、若年者では、関節包が、肩甲骨側から剥がれ、または破れ、中年以降では、腱板(=関節を包む筋肉)が、上腕骨頭に付いている部位で断裂することがあります。
脱臼に伴い、肩・腕・手に行く上腕神経叢が損傷することもあり、中年以降では高率で損傷が認められます。
また、上腕骨頭の外側や前方にある骨の突起(=大結節や小結節)の骨折をしばしば伴います。
少ない症例ですが、後方脱臼は、画像による判断が難しいため、専門医以外では、60%程度が見逃されると言われています。
したがって、最初の治療先で肩の痛みの原因に対する十分な説明がされず、痛みが持続するときは、専門医を受診し、後方脱臼の有無を検討しなければなりません。
合併症を伴う、可動域の制限が認められるときは、12級6号の限りではなく、10級10号も予想されます。
一度外れても簡単にもどる亜脱臼や数分間腕全体がしびれたようになるデッドアーム症候もありますが、本質的には脱臼と同じ損傷ですが、14等級相当の神経症状はともかくとして、可動域に大きな制限を残すような後遺障害を残すことはほぼ無いと思います。
3) 可動域制限と立証方法
骨と腱板や、関節唇の軟部組織における器質的損傷を立証するには、CTとMRI撮影が欠かせません。
CTでは、関節の安定性を重視する必要から、バンカート部位=肩甲骨関節窩下縁前方、ヒル・サックス部位=上腕骨骨頭後外上部の撮影をお願いしてください。
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この記事を書いた人
弁護士法人江原総合法律事務所
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